アメリカのマーベル・ユニバース映画の中で、いちばん格好いいキャラクターをあげるとしたら、アイアンマンことトニー・スタークの家にあるコンピュータJ.A.R.V.I.S.(ジャービス)が考えられるでしょう。J.A.R.V.I.S.はスターク家の暖房システムからアイアンマン・スーツの操縦まで何でもお世話をするのです。
残念ながらJ.A.R.V.I.S.はお話の中だけのコンピュータですが、スーパーコンピュータは本当に存在し、いろんなすごいことをやってくれるのです!スーパーコンピュータを使って、宇宙の始まりや、いずれやってくる宇宙の終わりについても計算による実験が行われました。
今月、科学者はスーパーコンピュータを使って、2年前からわからなかったなぞを解きました。モンスターパルサーのなぞです。
2014年、宇宙望遠鏡は予想すらしていなかった、まばたきをする信号を見つけました。それは、ブラックホールが物をのみこんでいるところから来た信号だと考えられていました。(私たちとちがって、ブラックホールは近づいてきた物を何でも食べてしまうのです。星でも惑星でも何でも!)
ブラックホールそのものは見えませんが、いろいろな物をとても速く引きよせます。ブラックホールの近くまで一気に落っこちた物は、ものすごく熱くなり光りはじめます。まるで2本の棒をこすりあわせると燃え始めるように。
ブラックホールがどんどん物を食べると、どんどん明るくなりますが、ある明るさまでしか行きません。最後には、ブラックホールに落ちこむ物がたまってゆき、交通渋滞(こうつうじゅうたい)のような状態がおきるため、ある明るさを超えることができないのです。このため、ブラックホールに飲み込まれる物の量の限界が決まっています。
ブラックホールは、とてつもなく強い重力を持っています。そのため、こんな交通渋滞をのりこえて物を流しこみ、もっと明るくなることができるのです。2014年に観測されたものは、太陽の1000万倍も明るかったのです!
バイパス(別の通り道)を作って交通渋滞をなくし、とてつもなく明るいX線(エックス線)を放つのは、宇宙の中でも、重いブラックホールだけだと長いあいだ考えられてきました。(天文学では、ものすごく明るいX線を発する天体をULX「超大高度X線源」といいます。)しかし、ブラックホールはまばたきをしません。ではこの変わった天体は、いったい何者なのでしょうか?
ここで、スーパーコンピュータの登場です。このULXまで、光でも1200万年かかりますから、行って見てくることができません。そのかわり科学者は、まばたきする変わったULXについて、地球の実験室にあるスーパーコンピュータで計算による実験で調べたのです。
計算の結果、私たちが正しいと思っていた事実と違って、「パルサー」とよばれるまばたきする星でも、バイパスを作って宇宙の交通渋滞をなくすことができるかもしれない、ということがわかりました。ブラックホールほどは重力が強くなくても、バイパスを作ることができるこのモンスターパルサーに、スポットライトをあてる時がやってきました。
知っ得ダネ
世界で一番速いコンピュータは、中国の太湖之光(タイフーライト)です。驚くことに、1秒間に9京(けい)3000兆(ちょう)回の計算をおこなうことができます。普通のコンピュータでは、1秒間に10億回くらいの計算をするので、その9300万倍くらい速いということになります。
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